感動的なストーリーから、何世代にもわたり世界中で愛され続けている「フランダースの犬」。誰しも一度はその物語に触れたことがあるのではないでしょうか。そんな「フランダースの犬」ですが作中に登場する「パトラッシュ」はどのような犬種なのか、皆さんはご存じですか。
今回の記事ではパトラッシュの犬種についてを中心に、特徴や性格、物語の結末について紹介します。
目次
パトラッシュの犬種は?
フランダースの犬 に登場するパトラッシュの犬種はブーヴィエ・デ・フランドルとされています。「ブーヴィエ」は「牛追い」の意味があり、ブーヴィエ・デ・フランドルは牧牛犬として牛飼いたちに飼育され、重宝されてきた犬種なんです。そして「フランドル」はベルギー西部を中心にオランダ南西部やフランス北東部にまたがる地域を指します。「フランドルの牛追い」といった意味合いの名前になるのですね。
フランドルはフランス語由来の地域名であり、英語由来となると「フランダース」になります。「フランダースの犬」というタイトルも地域名から来ているのですね!
ブーヴィエ・デ・フランドルの特徴や性格は?
ブーヴィエ・デ・フランドルは飼い主やその家族への忠誠心にあふれた犬であり、人懐っこくて温和で優しく、とても穏やかで落ち着いた性格とされています。その一方で頭脳明晰で賢く、辛抱強い一面も持ち、大農園の番犬や警察犬としても多くの犬が活躍しています。
こういった特徴を見ると一見飼いやすそうだと感じる方も多いようですが、一方で体高が大体60cm台、体重もメスなら30kgほど、オスなら40kgに至るものもいるなど、少々大きめ。イメージだと近年日本で大人気を博したスパイファミリーに登場するボンド 犬種のような犬だと言えるでしょう。更に活発で体力もあるので必要な運動量もかなり多めです。毛むくじゃらなのでトリミングなどの手入れも多く必要になり、ある程度の環境と飼育慣れした人ではないと飼うのが難しいといわれています。
こういった側面から、初心者にはあまりお勧めされない犬種となっているようです。
ブーヴィエ・デ・フランドルは黒色?
さて、ここまで読んでくださった方々は、ブーヴィエ・デ・フランドルを白と茶色の二色が主の犬だと想像している人が多いのではないでしょうか。ところが、実際のブーヴィエ・デ・フランドルは黒い毛のものが一般的です。中には明るい褐色の毛並みのものもいるようですが、いずれにしても皆さんのイメージとは大きく離れているように思えます。
というのも、「フランダースの犬」という作品は原作が児童文学であり、皆さんがよく知っているアニメは児童文学をアニメ化したものなのです。原作のパトラッシュは「全体に黄色、もしくは褐色の、がっしりとした立ち耳の大型犬」と描写されています。
アニメ「フランダースの犬」のパトラッシュの犬種は?
では、日本のアニメ「フランダースの犬」に登場するパトラッシュはどういった犬がモデルになっているのでしょうか。アニメ「フランダースの犬」を手掛けた監督、黒田昌朗さんはパトラッシュのデザインについて過去に「子どもたちに馴染んでもらいやすくするため、セント・バーナードや和犬を参考にした」と語っており、また「本来の黒くて毛が固い牧畜犬のイメージだと少々可愛げが足りなかった」とも明かしています。
実は原作の時点でも、描写だけを見るとブーヴィエ・デ・フランドルよりもアニメに登場したパトラッシュの方が外見上の特徴は近いようです。黒田昌郎さんも、ブーヴィエ・デ・フランドルの写真を見てパトラッシュとのイメージが大きく違うと感じたことから、大きく子供向けのアレンジを加えたそうです。
セント・バーナードの特徴や性格は?
犬の中でもトップクラスに重く大きい犬種であるセント・バーナード。穏やかで落ち着いた性格であることはブーヴィエ・デ・フランドルと共通しています。警戒心はしっかりと持っており慎重な性格の多い犬種ですが、人に対してとても懐っこくて、友好的な側面をもった犬種でもありますよ。
ただ、大型犬ということもあり、散歩をする際には飼い主側にもある程度のパワーや体力、技術が当然必要になります。また日頃の食費や医療費などの負担も大きくなりがちで、ブラッシングも毎日必要になりますよ。
身体のサイズが小さい子犬の頃から食欲旺盛なのですが、成犬になると肥満のリスクが高くなるので、食事量にも気をつけなければなりません。アニメ「フランダースの犬」を見てパトラッシュの犬種といわれるセント・バーナードに憧れを持つ子供や家庭は多いようですが、実際に飼育するのはかなり大変なようですね。
フランダースの犬の結末について
フランダースの犬の結末といえば、主人公のネロとパトラッシュがクリスマスの夜に大聖堂の前でずっと探し求めていた絵を見て「パトラッシュ、疲れたろう。僕も疲れたんだ、何だかとっても眠たいんだ」という言葉を最後になくなってしまうというラストが日本では多く認知されています。誰しも、一度はこの切ないシーンで心を痛めたのではないでしょうか。
しかし実はこの結末は本場であるヨーロッパを中心に賛否両論あり、実は結末が書き換えられたハッピーエンドの「フランダースの犬」が刊行されているのはご存じでしたか。
日本でも1936年に刊行された「フランダースの犬」にてハッピーエンドの様子が描かれており、多くの人が知るアニメのラストとは異なる展開が用意されています。次からはその異なるラストについて見ていきましょう。
ハッピーエンドのフランダースの犬のラストは?
険しい雪が降り注ぐクリスマスの深夜、大聖堂でずっと一度は見てみたいと探し求めていた絵にたどり着いたことで遂に力尽きてしまったネロとパトラッシュですが、後日刊行されたハッピーエンド版ではその翌日に無事に目が覚めており、目覚めたネロとパトラッシュの元には立派な馬車が迎えに来ます。その場所に乗って、ネロとパトラッシュは無事に自分達の故郷へと戻る、といった内容になっていました。
日本で認知されている大聖堂の前で沢山の天使の迎えと共に天に召されるラストは、感動的であるという声の一方であまりに残酷だという声も多かったのだとか。そういった読者からの反響の声が強く、結果として最終的にハッピーエンド版のフランダースの犬が刊行されたようです。
欧州人からはネロに対して厳しい声も?
実はフランダースの犬が生まれたヨーロッパでは、作中のネロに対して厳しい声や意見が寄せられているのはご存じでしたか。
というのも作中でネロの年齢であった15歳はヨーロッパ現地では立派な大人と言われる年齢であるため、大人でありながら真っ当な職につかないで絵ばかりを描き続けていたネロは働かないで好きなことしかしないといった印象をファンに与え、「ニート」のような扱いをされていたそうです。ヨーロッパでは最後の自殺のような描写にはあまり共感を得られなかったともいわれています。
同じ物語なのに、日本とヨーロッパでは捉え方や感じ方が全く異なるのは少し面白いですよね。こうした国や地域の考え方を調べてみて改めてフランダースの犬をみてみると、また違った視点から物語を楽しめるのではないでしょうか。
最後に
今回の記事では、フランダースの犬に登場するパトラッシュの犬種について、性格や特徴、物語のラストについて紹介しましたがいかがでしたか。アニメ版はブーヴィエ・デ・フランドルをモデルとしていないので、そもそもの作品タイトルと矛盾するような気もしますね。
実際に多くの視聴者にとってはパトラッシュの犬種と言われて真っ先にイメージするのは、やはりセント・バーナードのような犬種ですよね。